非難される訓練
残るひとりの足取りも明らかになりつつあるようですね。
あの事件は宗教団体による
テロ事件という位置づけになっているわけですが、
当時のインパクトは凄かったと同時に、
そういった事態に対する備えも大事なんだと実感させられました。
昨年の震災以来、
災害に対する備えが問われるようになってきています。
もちろん自然災害ばかりでなく、
犯罪に対する心構えもしておかなければいけません。
よく避難訓練というのを
会社や学校単位でもってやっておりますけども、あれは生ぬるいですね。
もうちょっと現状に即したといいますか、
リアルかつ過激な避難訓練をやる必要があると思いますよ。
そうなりますと、小学校でやる避難訓練も随分変わってまいりましてね。
「はい、1年2組の皆さん、いいですか。
今日はですね、避難訓練がありますから、
この後、校長先生から校内放送が入りますから、放送が入ったら、
皆さん速やかに行動してくださいね。いいですか?」
「は~い!」
「…ピンポン、ピンポン…避難訓練、避難訓練、全校生徒の皆さん、
只今校舎内にテロリストが侵入致しました。
総勢約15名、銃火器、爆発物等の武器を所持、
良い子の皆さんは、担任の先生の指示に従って、
グラウンドまで速やかに避難してください。諸君の健闘を祈ります」
「はい、皆さん放送が入りましたよ。すぐに着替えてくださいね。
…あら、鈴木君、どうしたの?先生昨日もちゃんと言ったでしょう。
校長先生からの校内放送が入ったら、いつでも戦えるように、
すぐに迷彩服に着替えてフェイスペインティングをして、
アーミーナイフと拳銃を持って、
ファイティングポーズを取るって言ったでしょう。
どうしたの?迷彩服忘れちゃったの?しょうがないわね~。
じゃあ今日はね、給食当番の割烹着着てなさい。
…あら景子ちゃん、まあそれ、おニューね」
「うん、これね、ママに買ってもらったの」
「まあ、よかったわね~、スミス&ウェッソンの45口径。
でもね、まだちょっと景子ちゃんには早いかもしれないから、
撃つ時にはちゃんと両足を踏ん張って肩を安定させて撃たないと、
骨が砕けちゃったりするからね。
…あら加藤君、ダメでしょう、迫撃砲なんか持ってきちゃ。
しかもナパーム弾付きで。
ちゃんと『避難訓練のしおり』にも書いてあった通り、
銃火器類は、ひとり120万円まで」
「先生、バナナは銃火器に入りますか?」
「入りませんよ。バナナは銃火器にも、おやつにも入りませんからね。
じゃあ皆さん、準備ができたら、一列に並んでください。
これからグラウンドまで避難しますからね。
くれぐれも、自分の身は自分で守る事。
じゃあ増田君、近藤君、後方警備にあたってくださいね。
行きますよ、レッツ・ゴー!…さあ、皆さん、迅速かつ慎重にね」
「先生、前から渡辺先生と岡本先生がやってきました」
「はい、皆さんお待ちかね、
今日のテロリスト役の渡辺先生と岡本先生ですよ。
先生たちも手加減なしにかかってきますから、
皆さんも本気で戦ってくださいね。
急所さえ外せば、撃っても構いませんよ。
はい、頑張ってくださいね~…ほら、頑張って、頑張って、加藤君も鈴木君も。
ほらケンちゃんダメでしょう、アーミーナイフを使う時には、
ちゃんと背後から腎臓を狙う事。
正面から心臓を狙うより、出血が少なくて致死率が高いんだからね。
…はいはいはい、もういいです、もう先生動きませんからね。
そこ、トドメ刺しちゃダメですよ。はい、じゃあ次行きますからね」
なんてんで、これぐらいやれば、
危機管理態勢というのも訓練されるんじゃないでしょうか。
微笑亭さん太