壁に意味あり
『壁に突き当たる』と言いますが、
その壁を突き抜けて向こうへ行けたら、
こんなに楽な事はありませんよね。
高い壁の向こう側に、手に持っているボールを投げる場合、
当然の事ながら、その壁を越える高さまで
ボールを投げる事が必要になります。
つまり、壁の高さに相当する位置エネルギーよりも、
大きな運動エネルギーをボールに与える必要があるわけなんですが、
量子力学の世界においては、
ボールを壁の高さまで投げる事ができないのに、
ボールを壁の向うに投げる事ができてしまうそうですね。
さながら壁にトンネルが生じて、
そのトンネルを通ってボールが壁をすり抜けるようだという事で、
これを『トンネル効果』というそうです。
何でこんな事が可能なのかと言いますと、
量子というのは動いてるわけですよね。
『そりゃそうだよ、毎日船に乗って魚獲ってんだから』って、
その『漁師』じゃありませんからね。
物理量を示す最小単位の事ですが、動いてると言っても、
それは普通の認識の『動いている』ではないんですね。
ある確率でここにあり、次の瞬間には、
またある確率で別の場所にあるという、
そういう確率上ありうる場所をまとめると『量子の軌道』になるんですね。
これは『移動』しているわけではないので、
その間に障壁があっても関係なく、
あたかも突き抜けたかのように場所が変わってしまうんですね。
ですから、人体を構成する全ての量子の存在する場所が、
偶然壁の向こうになれば、
人体まるごと壁抜けできる理屈になるというわけですね。
ただ、この理屈で壁抜けできる確率は、
人類が誕生して以来、全ての人間が生まれてから
死ぬまで壁に体当りし続けたとしても、
一人出来るか出来ないか程度の確率らしいですから、
ドリームジャンボ宝くじの一等を
全部自分で当てるよりも難しいかもしれませんね。
万が一できたとしても、
壁を完璧にすり抜けられる確率よりも、
体の一部だけが壁をすり抜けたところで、すり抜けが終わってしまい、
壁と体が融合しちゃう確率の方が高いでしょうから、
一生壁に挟まれたまま暮らすのは嫌ですよね。
もちろん確率はゼロではないですから、
ひたすらテレビモニターにタックルし続ければ、
事によったら、AKBが歌ってるど真ん中に
登場できる可能性もあるわけですよ。
と、同時に、貞子がテレビから出てくる確率もあるという事ですね。
「挫折という高い壁にぶつかったんですが、どうすればいいでしょうか?」
「天文学的確率で通り抜けようとせず、頑張って登りましょう」
人から相談されたら、こう答えるのがベストでしょうね。
微笑亭さん太