ブレイボーイ
誰だったかな……え~っと……あ~思い出せないな……
ど忘れしちゃったな……あ~ダメだ、もう間に合わない……
どうも!お久しぶりです。お見それしちゃいましたけど、
あなた、どちら様でしたっけ?」
「バカ、お前の親父だ」
これは『粗忽長屋』や『粗忽の釘』など、
粗忽者が登場する噺のマクラで使われる、
定番中の定番の小噺ですよね。
でも実際、向こうから歩いてくる人の顔が
思い出せないという経験はありませんか?
つい数日前、
近くのコンビニに行こうと歩いていた時に、
向こうから来た二十代後半くらいの男性が、
私に向かって満面の笑みで頭を下げてきました。
……えっ?誰だっけ?
思い出せません。
やはりこういう時というのは、
『あなた誰ですか?』とは聞けないものですね。
相手に物凄く失礼な気がしますから。
通り過ぎる数秒の間、
頭の中では必死に彼の顔を検索してるんですが、
全く該当するデータが見つかりません。
『あれ?スポーツジムで会う人か?……いや、それはないな。
だって私は、生まれてから一度もスポーツジムに行った事ないからな』
わけ判らない事が頭の中をグルグルします。
でも、本当に失礼なのは、『思い出せない事』ではなくて、
思い出せないせいで、向こうから笑顔で挨拶されているにもかかわらず、
無反応の仏頂面でスルーしてしまい、
とてつもなく『礼儀知らずなキャラ』になってしまうという事です。
後から考えてみれば、判らなくても
「……あ、どうも~」みたいな感じで、
とりあえず頭だけ下げておけばいいのに、
変なところで融通がきかずに固まってしまう癖があるんですね。
その間も、相手が誰だったか思い出そうと、必死で考えてるんですよ。
でもそんな事は相手には伝わらないでしょうから、
『挨拶をしても、無視して通り過ぎた無礼な男』
という印象だけが残る事でしょう。
これがどうにも…困りますね。
皆さんは、こういう時、
どういうかわし方をされてるんでしょうかね?
これ以上、評判が悪くなる前に、
良い方法があったら教えてください。
微笑亭さん太