怒るではなく叱る
怒りに任せて、ただ感情的に声を荒らげても、
相手には恐怖ばかりで響かないという事になりかねませんからね。
道端で小学校三年生くらいの男の子がお母さんに怒られてましてね。
「何であんな点数取るの?
お母さんがいつも言ってるでしょう!
テストはまず、ゆっくり問題を読んでって・・・あんた、聞いてんの?」
「聞いてな~い」
「もう!どこから聞いてないの?」
「『お風呂のフタ閉めて』ってところから」
「昨日から!?」
お母さん、絶句してましたけどね。
学生時代、先生に説教された経験のある人は多いと思いますが、
大人になっても、その時の事が忘れられない方もいるでしょうね。
「お前、学生時代に、親身になって怒ってくれたり、
説教してくれたりする先生に出会った事ある?」
「あるよ。俺が小学校六年生の時、
四十代半ばくらいの男の先生が担任だったんだけど、
ちょうどその頃、学校の近くのスーパーで、お菓子の万引きで捕まったんだよ」
「えっ、そうなの?」
「すぐにその担任の先生が飛んできて、
俺の顔を見るなり、いきなりビンタされたんだ。
俺は痛いのといきなりのビンタのショックで、涙目になっちゃったんだけど、
よく見ると担任も泣いてるんだよ」
「アツいね~」
「先生が言うんだ。
『いいか、人の物を盗るというのは最低の行為だ。
これを盗む事で、どれだけの人が悲しむか判ってるのか?
そのお菓子は食べれば無くなる。
だが盗んだという事実は一生消えないんだぞ!』
そう言って、一時間以上、延々説教されたんだよ」
「へえ~、ますますアツいね」
「店の人が『もういいですよ』と言っても説教は続き、
ようやく先生と店を出た時には夜になってた。
すると先生は『お腹すいてるだろう?』と駅前のラーメン屋へ連れていってくれて、
ラーメンとギョーザをおごってくれたんだ。
口を開けるたびにビンタされた頬っぺたが傷んだけど、ラーメンは美味しかったな~」
「それは忘れられない味だね」
「その後、車で家まで送ってもらったんだけど
『今日の事は、親に言っても言わなくても、どちらでもいい。
その代わり自分が何をしたか、よく考えるように』と言い、
先生は去って行ったんだよ・・・いい先生だろ?」
「うん、そんないい先生、本当にいるんだね。
そのエピソードもいい話だね」
「だろ?ただ一つだけ問題があってな」
「問題?何」
「俺の万引きって、冤罪だったんだよ」
これはやはり、残念なエピソードに入ってしまうんでしょうね。
微笑亭さん太