手中の宇宙
ひらひらと飛んでいたところで目が覚めたが、
果たして自分は蝶になった夢を見ていたのか、
それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか
判らなくなるという話があります。
これは道教の始祖とされる荘子の
【胡蝶の夢】と呼ばれる説話でしてね。
確かに今の自分が見ている世界が現実なのか夢なのか、
本当のところは判りませんよね。
夢というのは自分以外の他人には
決して見る事はできませんから、
多少作り話をしても判らないわけです。
「昨夜俺さ、
石原さとみや桐谷美玲みたいな美女を何人もはべらせて、
山のような金塊を積んだ豪華客船で世界一周しながら、
各国の山海の珍味を食べ放題なんて夢見ちゃったよ」
随分と【盛った話】をしてしまったりしてね。
これを【誇張の夢】と言ったりするわけですね。
この【胡蝶の夢】と同じような話は、
物理学の分野でもあるようですね。
2003年にオックスフォード大学の
ニック・ボストロム教授という方が
『宇宙が実はシミュレーションである』という考え方を
提唱されてましてね。
この考え方は【シミュレーション仮説】と呼ばれていて、
この宇宙が本物なのか、
それともコンピューターの産物なのか、
学者たちの間で議論が交わされてるようですね。
『宇宙全体をシミュレート可能なほど
高度に発展した文明があるなら、
そのシミュレーションを実行する可能性は高く、
地球や、地球に住む人々が【シミュレーションの中の住民】
である可能性もまた高い』というのが、
ボストロム教授の主張なんですね。
その昔『世界は神が作った』と言われていたわけですが、
それが今では『世界はコンピューターシミュレーションかもしれない』
というのですから、随分と変わったものですよね。
もしも実際にそうだとしたら我々は
コンピューターの中で生きているという事になりますから、
掃除のおばちゃんが間違えて電源を引っこ抜いてしまったら、
この世は消滅なんて可能性もありえるわけですよね。
「じゃあ人類は、ゲームの中で生きてるみたいなものだね。
でもさ、俺みたいな無意味なキャラ作って何がしたいんだろ?」
「何言ってんだ。
主人公をより目立たせるための村人は、必要なんだぜ」
人類の99%は【村人A】という事になるんでしょうね。
仮にシミュレーションだとして、
実行しているのは誰なのかというのが気になるわけですが、
『特に幽霊などではなく、別の宇宙の若いハッカーであろう』
というのが学者たちの見解のようですね。
基本的に地球は、放置プレイ的にほったらかしてあって、
実行者の気が向いた時、時々覗いてるのかもしれませんね。
「この地球って星、
前回覗いたら恐竜でいっぱいだったから、
面白そうだな~と思って、隕石落としてみたんだよ」
恐竜絶滅の理由というのは、
案外そんなところなのかもしれませんね。
微笑亭さん太